ラホールで、世界最悪クラスのPM2.5を吸った鶏を食す【パキスタン旅】vol.16

旅の記録

ラホール市内の移動には、2020年に開業したばかりのパキスタン初の地下鉄を使う。これもまた中国の支援で建設されたものだ。自動改札を通り、電光掲示板を見ながら、ホームドアの前で電車を待つ。利用者はまだ少なく、容易に座ることができるレベルだ。この地下鉄の開業により、移動が格段に便利になった。車依存からの脱却が期待されているが、大気汚染がどれほど改善されるかは未知数だった。

しかし、地上に出ると、やはり霞んでいた。

電車から見た街 快晴とは思えない見通しである

駅から降りると、車通りが多い道沿いの屋台では、店員が野晒しになった売り物の魚を叩いていた。魚には無数のハエがたかり、路面には鱗が散乱している。道ゆく人々はそれを当たり前のように買っていく。空にはトンビが旋回していた。おそらく、道端の肉や魚を狙っているのだろう。

王族の保養地として造られた庭園に到着すると、ようやく排気ガスのない空気を吸うことができた。緑の木々に囲まれ、ピクニックを楽しむ家族の姿があった。しかし、水で満たされているはずの人工池は一部干上がっていた。どうやらメンテナンス不足で、水路がうまく稼働しない日があるようだ。ふと見上げた空も、相変わらず霞んでいる。喉に残る微かな痛みが、この街の空気の現実を思い出させた。

霞む空の下、人々の営みは続いていく。彼らにとって、これが「日常」なのだ。

今日の夕食は、バットカラヒというチキンカレーで有名な店に行くことにした。1947年に創業した、地元民にも愛される老舗だ。店は車の行き交う大通り沿いにあり、店の前にはたくさんの鶏が足を紐で縛られ、柵に繋がれていた。

「これを調理するのか?」

そう思いながら店に入り、看板メニューのチキンカレー1kgを注文すると、店員が迷うことなく柵から一羽をつかみ、店の前で首を落とし始めた。

まさか、そこから調理するのか。驚きとともに、ふと考える。この鶏は、さっきまで世界最悪クラスの排気ガスと汚染された大気に晒されていたのではないか?それを今から食べるのか?

車道のすぐ前で鶏を殺すところから調理を始める

不安になりながらも、しばらく待つこと20〜30分。

大きな鉄鍋でじっくり煮込まれたチキンカレーが、目の前に運ばれてきた。骨ごと豪快に煮込まれたそのカレーは、スパイスの香りが立ち上り、湯気とともに食欲をそそる。一口食べた瞬間、衝撃が走った。

「めちゃくちゃ美味しい。」

当然ながら、先ほどまで生きていた新鮮な鶏だ。肉は柔らかく、スパイスがよく染み込んでいる。大気汚染のことを気にしていたが、そんなことはもうどうでもよかった。
今まで食べた鶏の中で、一番美味しいかもしれない。
生き物の命をいただくことに感謝しながら、スプーンを進めた。

しかしその一方で、胃はすでに限界を超えていた。実は前日もまた、油たっぷりのニハリを食べていた。まるで追い打ちをかけるように。牛肉を長時間煮込んで作るこのカレーは、濃厚な旨味が詰まった絶品料理だが、連日の油料理で胃は悲鳴を上げている。

「さすがに全部は無理かも……」
そう思っていたところ、友人が気を利かせて多めに食べてくれた。
なんとか完食し、店を後にしたが、胃の重さはしばらく取れそうになかった。

ニハリ

【旅のメモ⑧】
バッドシャヒ・モスクを上から眺めるのに最適なスポットの一つが、「Haveli Restaurant」というレストランカフェだ。ラホールのフォートロード・フードストリートに位置し、築200年以上の邸宅を改装して作られた。昼も夜も営業しており、ルーフトップのテーブル席からモスクを一望できる。外装・内装ともに美しく、ムガル時代の宮殿を彷彿とさせる雰囲気が魅力だ。旧市街の喧騒から一時的に離れ、静かに過ごせる場所でもある。訪れた際には、地元の人々が結婚式を行っていた。

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