アルティット村の大家族の宴【カラコルムハイウェイ】vol.4

旅の記録

フンザ地方にあるアルティット村には、アルティット・フォートという古い城塞がある。
ここはかつて、フンザの統治者の本拠地として使用されていた。

城を登って窓から外の景色を見ると、碧色に澄んだ川が美しかった。フンザ川と呼ばれているこの川は、下流に行くとインダス川となり、最終的にインド洋に注ぐ。
インダス川は、パキスタンの国土の3分の1が水没した洪水を引き起こし、ここ数年大問題となっている。地球温暖化の影響で、雪溶け水の量が増えているのがその一因だという。パキスタンのような貧困国では、気候変動による被害が甚大になる。決して他人事ではない。

城から見たアルティット 歴史的な古い村である
村の道は迷路のようになっており、塀が張り巡らされている

村を歩いていると、僕らのような外国人が珍しいのか、人々によく話しかけられる。フンザはウイグルやタシギスタンに地理的に近いためか、インド系の南アジアと違い、中央アジア由来の顔立ちがシャープな人が多いようだった。

散策を続けていると、とある家から太鼓の音と歓声が聞こえてきた。お祭りでもやっているのだろうか、音のする方を少し覗いてみた。すると、中から人が出てきて声をかけられた。

「こっち来ていいよ、どうぞ!」

突然のことで驚いたが、僕らは言われるがまま家の庭に案内された。

庭に入ると、想像以上にたくさんの人が集まっていた。子どもから老人まで、50人はいると思われた。

このフンザ地域では、自分と子どもと孫の合計が1ダース(12人)になるとお祝いのパーティーをやるという。今日がそのパーティーの日だったようだ。

パーティーの様子

太鼓に合わせて人々が踊る。振る舞われたチャイを啜りながら、その様子を眺めていた。家族の大切な日に、通りすがりの我々を受け入れてもらえたことが嬉しかった。

この日は丘からサンセットを眺める予定にしていたので、そろそろ出ようと席を立ったところ、

「夜は空いてるか?」「みんなでディナーを食べるから、うちで一緒に食べないか」

と誘われた。
旅が上手くいきすぎている。パキスタン人の家で食事を共にできる、またとないチャンスが舞い込んできた。

イスラム教には、客人をもてなすという素晴らしい文化がある。
実際に、以前訪れたイランでは毎日何杯もチャイを振る舞ってもらい、サウジアラビアではイエメン人たちと毎晩一緒に遊び、夜ご飯をご馳走してもらっていた。毎回心を動かされる、感動的な出来事だった。

しかし現地の人の家を訪問したことはなかった。これまで自宅に招こうとしてくれる人も多かったが、中東では毎回1人旅だったため、強い興味はあったが、知らない人の家に上がるのは少々不安があり、断るしかなかったのだ。

今回は大家族のパーティーだ。そして今日は僕以外にも2人連れがいる。

「ぜひ参加したい、夜になったらまたここに戻ってくる」と返事をして、一旦その場を去ることにした。

その後、アルティット村にあるデュイケルの丘に登った。フンザ地域一帯を照らす太陽が沈みゆく様子を眺めながら、時を重ね川が山肌を削って作られた雄大な谷に、ただ圧倒されていた。

デュイケルの丘

記事の続きはこちら

タイトルとURLをコピーしました