ギルギットからイスラマバードへ 12時間のデスロード【パキスタン旅】vol.11

旅の記録

パキスタン滞在3日目の朝、ギルギットの空は澄み渡る快晴だった。朝一番の首都イスラマバード行きの飛行機に乗るため、ギルギット空港へ向かった。

これまでの2日間を共に過ごしたドライバーのアシュラフとは、ここで別れることになる。彼に感謝を伝え、固く握手を交わし、別れを告げた。

空港の入り口で職員に、「今日の飛行機は飛ぶか?」と尋ねると、返ってきたのは短い一言だった。
「全てキャンセルだ。」

冬季は欠航が多いと聞いていたが、実際に直面すると、その絶望感は想像以上だった。「次の便は?」「明日は飛ぶのか?」と食い下がるが、職員は首を横に振るだけで、誰も確かな情報を持っていない。明日まで待っても飛ぶ保証はない。
明日のフライトを予約することも考えたが、飛ぶ保証はない。

ここで待っていても状況は変わらない。今日中に陸路でイスラマバードに戻ることを決断した。その瞬間、12時間の長距離移動が確定する。

暇そうに談笑する空港職員たちを横目に、行きの飛行機が無事に飛んだのは、ただの幸運に過ぎなかったのだと痛感した。

新たに手配したドライバーとともに、カラコルムハイウェイを南下し始めた。しばらく走ると、標高8,126mのナンガパルバットが現れた。行きの飛行機からも見えた雪山だが、今日は霧がかかり、その威容はぼんやりとしか見えない。プロペラ機が欠航になったのも納得の光景だった。

ギルギット以南は、切り立った崖に沿うように続く険しい道だった。ガードレールはほとんどなく、崖沿いには大小の落石が無造作に転がっている。小石が車のフロントガラスに当たり、カツンと乾いた音を立てた。

道中、道路外に転落したトラックを見かける。幸い、谷底までは落ちておらず、崖上からワイヤーで引き上げられている最中だった。数人の男たちがチェーンを引っ張っていたが、容易には戻せそうになかった。

さらに1時間も経たないうちに、完全に転覆し潰れた車を目撃する。周囲には大きな落石が散乱し、車体は押し潰されていた。運転手は無事だったようだが、落石が道路を塞いでいたため、周辺の人々と協力して石をどかした。

この道で事故に遭ったらどうなるのか?

考えたくもなかったが、嫌でも現実が突きつけられる。この地域には高度な医療施設がほとんどなく、ギルギットかイスラマバードまで行かなければ適切な治療は受けられない。救急搬送には半日から丸一日を要する。地元の住民は緊急時にはヘリコプターを要請するが、天候が悪ければそれすら飛ばない。

「この道で事故に遭ったら、助かる可能性はどれほどあるのか?」という不安が頭をよぎる。

ドライバーは寡黙で、英語もほとんど通じなかったが、険しい道をものともせずに進んでいく。しかし、後部座席のシートベルトの1つが壊れていることが、さらに不安を増強させた。

すると、カーブに差し掛かった瞬間、突然、対向車がセンターラインを越えて突っ込んできた。

「やばい!」

瞬間的に身を縮める。ブレーキ音が響き、車体が揺れる。ドライバーは迷うことなくハンドルを切り、間一髪で回避した。対向車はそのまま走り去り、後方に埃が舞う。

彼は「あいつはクレイジーだ」と呟きながらも、何事もなかったかのように運転を続けていたが、僕の心臓は激しく脈打っていた。ほんの少しでも判断が遅れていたら、大事故になっていただろう。

カラコルムハイウェイでは、統計が取られているだけでも年間300人が交通事故で命を落としている。今日もまた、どこかで誰かが命を落としているのかもしれない。

記事の続きはこちら

タイトルとURLをコピーしました