世界最大の鏡張り建築「マラヤ・コンサートホール」@アルウラ【アラブ・紅海陸路越境旅2025】vol.2

旅の記録

アルウラ旧市街の人影まばらな通りを後にし、郊外にあるマラヤ・コンサートホールへ向かう。
砂漠の中にそびえるこの建物は、世界最大の鏡張り建築としてギネス世界記録に登録されている。2019年に完成したばかりで、サウジアラビアの観光開発計画「ビジョン2030」の象徴的存在でもある。入場は完全予約制で、事前にツアーを申し込み、ゲートで予約票を提示して通過する仕組みだ。

車は岩山が連なる砂漠を進む。すると、遠くに陽光を反射して輝く巨大な直方体が突然姿を現した。
周囲の風景を映し込み、まるで景観に溶け込むかのようだ。非現実的でありながら不思議な調和を見せていた。

タクシードライバーが車の屋根を開けてくれる。彼は白い長衣「トーブ」に、赤白格子柄のスカーフ「シュマグ」、それを留める黒い輪「アガール」というサウジ伝統衣装を身につけていた。

建物の目の前で降ろしてもらうと、まず感じたのはとにかく暑いということ。鏡面が太陽光をすべて反射し、その照り返しが容赦なく肌を焼く。砂漠の真ん中に鏡張りを建てればこうなることは想像できたはずだが、ここでは実用性よりもインパクトが優先されたのだろう。

マラヤは縦横が100mで高さが26m、壁面ほぼ全てを覆う鏡は約9,700m2。青空、砂岩の岩山、そして自分自身までもが巨大なキャンバスに映り込む。

中に入ると、天井は高く広々としたロビーが出迎える。冷房が効き、外の灼熱が嘘のように涼しい。
薄暗い室内の高窓からは、外の岩山と砂漠が額縁のように切り取られて見える。ソファに腰掛けると、スタッフがコーヒーを振る舞ってくれた。やはり予約者のみが入場できるようで、しばらくするとツアーが開始された。

女性ガイドに案内され、アメリカ人やインド人の旅行者らと一緒に10名ほどで館内を巡る。女性は黒いアバヤを着て目だけを出し、口元は隠している。これもサウジアラビアでよく見られるスタイルだ。ここでは国際的な音楽イベントや会議が行われるほか、結婚式も開かれるという。
昨年は2件の挙式があり、そのうち1件は招待客4万人・費用10億円という規模だったそうだ。もはや別世界の話だ。

「マラヤ(Maraya)」とはアラビア語で「鏡」を意味する。「過去を映し、人類の伝統と自然のつながりを感じさせる鏡」というコンセプトが込められているという。

大きなメインホールはブラウン基調で木材を用いた落ち着いた内装だった。大物歌手を呼ぶコンサートイベントが定期的に行われているようで、そのプロモーションビデオを見させられた。正直に言えば、内装からは砂漠らしさはあまり感じられない。
大物歌手を招いた過去のコンサートの映像が流れていた、
もし砂岩やオアシスをイメージしたデザインを取り入れていたら、より土地との一体感が出たのではと思う。音響のために素材が限られるのかもしれないが、それでもなぜこの地でコンサートホールという用途を選んだのかという疑問は残る。

最後にルーフトップへ。直射日光を遮るものはなく、視界いっぱいに砂漠が広がる。
だが直射日光は苛烈で、屋上に立つだけで体力を奪われる。ここを単なる展望台ではなく、館内に自然光を取り込む天窓として活用すれば、より機能的な空間になっただろう。
また、館内から外景を望める場所がエントランスとこの屋上だけというのも少し惜しい。

ツアーが終わろうとしていたが、ルーフトップでインド人家族が「もう少し見ててもいいか?」とガイドに尋ねるや否や、返事を待たずにどこかへ行ってしまった。ガイドの女性は困ったように探しに行く。インド人らしいマイペースさに皆苦笑していた。

最終的にツアーは30〜40分ほどで終了したので、次は象の形をした岩の観光地「エレファント・ロック」へ行こうと思ったが、なんと貸切イベントでこの数日間クローズとのこと。。

エレファント・ロックとは、高さ52mにもなる巨大な奇岩で、数百万年にわたり、風と砂による浸食が砂岩を削り、現在の象の形を生み出したとされている。

大変残念だが、ドライバーに迎えに来てもらい、再び旧市街へ戻ることにした。

記事の続きはこちら

タイトルとURLをコピーしました